山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

日本の状況

抗体検査は重要。しかし各キットの見極めは慎重に

抗体検査は過去に感染したことがあるかを示す重要な指標です。アメリカニューヨーク州では、PCR検査で同定されている感染者数より、一桁以上多い人が抗体陽性であったと報告されています。日本でも4月下旬に、厚労省が日赤と協力し、献血サンプルを使って抗体検査の検証を行う、結果は51日頃に発表すると報道されていました。その結果がようやく公表されました。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000630744.pdf
公表資料を見ると5種類のキットが使われていました。PCR陽性者が多い東京都の今年4月の500検体、PCR陽性者が少ない東北地方の今年4月の500検体、さらには新型コロナウイルスが出現する前の去年1月から3月までの500検体について調べています。しかし結果は、なんとも判断に困るものでした。5つキットで共通して、抗体が陽性であったのは東京の今年4月の検体で1人のみという結果でした。キットによっては、新型コロナウイルス感染者がいないはずの去年1月から3月の検体でも陽性者が検出されていました。抗体検査のようなイムノアッセイでは、陽性と陰性を区別する基準値の設定次第で、偽陽性や偽陰性の割合が大きく変動します。各キットの結果を鵜呑みにするのは危険です。キットの開発に携わった研究者、もしくはキットの性能を熟知した研究者の助言のもと、慎重に大規模検査のデザインや結果の解釈を行う必要があります。残念ながらほとんどの抗体検査は中国など海外で生産されており、日本国内ではその全容にアクセスできることは少ないようです。そのなかでも、日本人研究者が開発や性能評価に深くかかわっている検査もあります。私が知っているのは以下の2つです。
大阪市大 城戸先生のグループ
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2020/200501
東京大学 川村先生のグループ
https://www.ric.u-tokyo.ac.jp/topics/2020/ig.html

実効再生産数(Rt)算出を試みました

新型コロナウイルスに対する対策は微妙な手綱さばきが求められます。緩めすぎると感染者の急増と医療崩壊を招きます。締めすぎると、休業自粛をお願いしている方々の生活が崩壊し、また抗体を持つ人の数がなかなか増えないため、第3波、第4波に対して脆弱になります。一人から何人に感染が広がるかを示す実効再生産数(Rt)を1未満で維持することが目安になります。Rtは統計や公衆衛生の専門家でないと算出できないと思い込んでいましたが、昨日に紹介した論文でエクセルを使って算出する方法が報告されています。そこで、専門外の科学者がRtを計算できるか試みてみました。Rtは、国や自治体の対策方針を決める重要な指標です。複数の研究者が独自に算出し、科学的議論に基づいた政策決定が健全と思われます。問題提起のために、専門外ではありますがあえて計算してみました。私の理解不足等による計算ミスもあり得ますので、あくまでも参考値としてお示しします。
(方法)
1.Coriらの論文からRtを計算するためのエクセルシートをダウンロード
2.Biらの論文からSerial intervalの平均を6.3日、標準偏差を4.2日と仮定
3.大阪府、北海道、および京都市のホームページから感染者数の推移をダウンロード
4.エクセルに感染者数を入力し、Rtを計算。
(コメント)
この結果は、あくまでも専門外の私が1つの論文で報告された方法に基づき計算したものであり、専門家の方から見るとお叱りを受ける点も多いと思います。
しかし、大阪府民である私から見ると、大阪府のRtが4月21日に1を下まわり、5月1日現在で0.6程度という計算結果は、府民の努力が報われているようで嬉しく思います。この値が続くようであれば、経済活動等を少し緩和出来る可能性を期待します。しかし油断は禁物で、緩めすぎるとRtはあっという間に1を超えると思います。
京都市も市民の努力で4月16日以降、Rtの平均値は1未満とい結果です。しかし95%信頼区間の上限は1以上という結果ですので、努力を維持する必要がありますし、iPS細胞研究所でも活動を引き続き普段の約20%に抑えたいと思います。
北海道は、4月11日の段階で2.7という計算結果でしたが、道民の皆様の頑張りで、5月2日には1.12という計算結果です。まだ1を超えていますので、引き続きの頑張りが必要と思われます。
東京では、新規感染者を見つけるための検査数の実態を知ることが出来なかったため、Rtの計算は断念しました。
大阪府におけるRtの推移
北海道におけるRtの推移
京都市におけるRtの推移

東京と大阪のPCR検査陽性率

東京都は7日ごとの合計から計算しました。徐々に減少しており、10%を下回りました。しかし、新規感染者を探す検査と、陽性者の陰性化を調べる検査が区別されていないため、真の陽性率はこれよりも高いはずです。陰性化するまで10回以上の検査を受けたケースもあるようです。これらすべてが検査件数として計上されているかは不明です。
大阪府のデータは、府から頂きました。こちらは5%程度まで低下してきています。陰性化確認の検査数は除外されているので、実際の陽性率を反映していると考えられます。
東京、大阪とも、外出自粛の効果で現れていると期待されます。努力は報われつつあります。引き続き、粘り強く頑張りましょう。
東京の陽性率
大阪の陽性率

検査陽性率について

4月26日の下記の記事で東京のPCR検査陽性率が約40%であるという厚労省のデータを紹介しました。その後、厚労省の陽性率(陽性人数/検査人数)の分母には健康保険適用の件数が含まれていないので、陽性率が高くなっていると指摘を頂きました。私は、分子の陽性人数からも健康保険適用分は除外されているに違いないと思い込み、この陽性率を紹介しましたが、データを確認すると除外されていないことがわかりました。ご指摘の通り、厚労省の発表している東京の陽性率は真の値より高くなっていると思われます。再び、お詫びして訂正いたします。
公表されている検査陽性者数と、保険適用分も入れた検査件数が公表されている4月22日までのデータから、1週間ごとの仮の陽性率を自分で計算してみました (図1)。仮とする理由はこの後に説明します。検査数が徐々に増加し、仮の陽性率は18%近くまで上昇していましたが、直近(4月16日から22日まで)では12%程度まで減少しているように見えます。多くの方の外出自粛の効果が出ていると期待したいです。
ただ、厚労省の公表データとは逆に、この仮の陽性率は、真の陽性率より間違いなく小さな値となっています。検査件数には、同じ人に複数回、検査した件数も含まれているからです。図2のようなモデルケースで考察しました。Aさんが発熱・咳で病院を受診し、医師の判断でPCR検査(保険適用)で陽性になったとします。この患者さんは入院し、症状は回復しましたが、退院できるのは2回連続でPCRが陰性になってからです(これも保険適用)。Aさんには家族が3名おられ、保健所の指示で健康安全研究センターで検査を受け、Bさんのみが陽性となり入院したとします。やはり退院は陰性が2回続いてからです(保険適用)。残りのCさんとDさんは、健康安全研究センターの検査で陰性だったとします。この例で、真の検査陽性率は、陽性人数(2人)/検査人数(4人)で、50%となります。しかし、保険適用分の検査については検査件数のみが公表されており、検査人数は公表されていません。したがって仮の陽性率の計算では陽性人数(2人)/検査件数(8件)で25%となり、真の陽性率より小さくなることがわかります。厚労省の発表している陽性率は、陽性人数(2人)/健康安全研究センターでの検査人数(3人)で66.7%と真の陽性率より高くなることになります。
PCR検査は、新たな感染者を同定する検査と、感染した人の陰性化を調べるための検査の2種類があります。感染者が増加するに従い、後者の検査が増えていることが予想されます。真の陽性率を知るためには、新たな感染者を同定するための検査がどれくらい行われているかを知る必要があります。
厚労省の発表している都道府県別PCR検査に関するデータから4月24日から27日まで4日間の東京での陽性率を計算してみると、28.0%(陽性者数375名、保険適用外の検査人数1341名)です。したがって真の陽性率は12%と28%の間となります(日はずれていますが)。一方、大阪府での4月24日から27日までの陽性率を厚生省のデータから計算すると10.2%(陽性者数106名、検査人数1034名)でした。大阪では保険適用の有無は区別していないようです。また重複した検査は除外しているとされています。したがって大阪の真の陽性率は10%程度と考えられます。
図1 東京におけるPCR検査の推移
図2 真の陽性率が重要

東京と大阪の状況ー非常に高い陽性率

日本の中で最も感染者の爆発的増加が心配されるのは首都東京です。図1は東京都が発表している日ごとの感染者数です。これを見ると4月7日の緊急事態宣言発令以降も、1日100以上の感染者報告が続いています。
一方、図2の検査件数を見ると、4月に入って伸び悩んでいます。検査数が増えないと、感染者の増加を見逃す可能性があります。
大阪では感染者数は減少傾向にあるように見えます(図3)。一方、検査数は少しずつ増加しています(図4)。

注目すべきは検査件数に対する陽性者の割合(陽性率)です。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000625188.pdf
東京で約40%、大阪で約20%と高い陽性率となっています。これは危険領域です。非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高いと推定されます。アメリカは日本よりはるかに多くの検査を行っていますが陽性率は20%程度で、専門家は、まだまだ陽性率が高すぎるので検査数を3倍は増やす必要があると訴えています。それが社会活動再開の最低条件だと主張しています。十分に検査をしているドイツは陽性率7%、韓国は3%です。感染者数のみで一喜一憂するのではなく、真の姿をとらえる必要があります。
(検査数、陽性率に関するNew York Times誌の記事)
https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/17/us/coronavirus-testing-states.html?smid=em-share
(東京都のデーター)
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
(大阪府のデータ)
https://covid19-osaka.info/
(厚生労働省のデータ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/houdou_list_202004.html
図1 東京都の陽性者数
図2 東京都の検査件数
図3 大阪の新規感染者数
図4 大阪のPCR検査数

東京の感染者はもっと多いかも

慶應大学が新型コロナウイルスと関係ない手術目的で入院した患者さんのPCR検査を実施したところ、約6%(67人中4人)が陽性であった。より多くの検査が必要であるが、市中での感染はより蔓延している可能性がある。
http://www.hosp.keio.ac.jp/oshirase/important/detail/40171/4

都道府県別の検査数、感染者数

開発者がどなたかはわからないのですが、非常に有用なためリンクさせて頂きました
https://covid-2019.live/

都道府県別の感染病棟の利用率

福野泰介さんが開発。東京、愛知、大阪では、すでに感染病床が不足しているようです
https://www.stopcovid19.jp/あ
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