山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

症状

乳がん治療中の重症化リスク

Vuagnat et al., COVID-19 in breast cancer patients: a cohort at the Institut Curie hospitals in the Paris area. Breast Cancer Research 528日オンライン版
https://breast-cancer-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13058-020-01293-8#Sec2
(内容)
Institut Curie hospitals (ICH, Paris area, France)
からの報告。59名の乳がん患者が新型コロナウイルス感染症と診断された。41名はPCR陽性、他は典型的な肺炎像で診断された。37名は転移が認められ、13名はステロイドを服用していた。59名中28名が新型コロナウイルスにより入院。6名はICUでの治療が必要であった。本論文の解析時点では、45名が回復。10名が入院中。4名が新型コロナウイルス感染症により亡くなった。死亡した4名は、高齢または高血圧などの基礎疾患を持っていた。乳がんの放射線治療の範囲や程度と、新型コロナウイルス肺炎の病態には相関は認められなかった。
(コメント)
患者数は少ないが、乳がんの治療中であっても新型コロナウイルスによる重症化のリスクは変わらないことが示唆された。

イタリアでも川崎病様の小児が急増

Verdoni et al., An outbreak of severe Kawasaki-like disease at the Italian epicentre of the SARS-CoV-2 epidemic: an observational cohort study. Lancet 5月13日オンライン版
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31103-X/fulltext
(内容)
イタリア・ベルガモの小児病院(General Paediatric Unit of Hospital Papa Giovanni XXIII)では、過去5年間(2015年1月1日より2020年2月17日)までに19名の川崎病の治療を行った。しかし新型コロナウイルスが拡大した2カ月間(2020年2月19日から4月20日)で、10名の川崎病様の小児が入院した。10名のうちPCR陽性は2名であったが、8名ではIgG抗体が陽性であった。新型コロナウイルスに関連する症例では、年齢が高く、心臓症状の頻度が高い傾向にあった。

川崎病に似た症状

Riphagen et al., Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic. Lancet 5月7日
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31094-1/fulltext
(内容)
イングランド南東部で小児重症患者の治療を行う病院からの報告。4月中旬の10日間で、8名の川崎病に似た患者が集中治療室に搬入された。このうち4名の家族には新型コロナウイルス感染者がいた。しかし8名の入院時のPCR検査では新型コロナウイルスは検出されなかった。8名のうち6名はアフリカ系カリブ、1人は中東、1人はアジア系であった。高熱、発赤、四肢痛、浮腫、消化器症状が共通してみられたが、微生物の感染は同定されなかった。全員がショック状態となり1名は死亡、他の7名は回復した。死亡した1名は死後に行われたPCR検査で新型コロナウイルス感染が確認された。もう1名も、退院後のPCR検査で陽性であった。
その後、患者数は20名まで増加している。そのうち最初の10名(上記の8名を含む)では、新型コロナウイルスに対する抗体が確認された。
(コメント)
新型コロナウイルスに感染し、いったんは無症状であった小児に、後になって川崎病に似た全身の炎症性ショックが生じる可能性が示唆されている。日本は2月末から休校が続いていおり小児の感染者は少ないが、今後、注意しなければならない。

嗅覚・味覚異常に関する2論文

Spinato et al., Alterations in Smell or Taste in Mildly Symptomatic Outpatients With SARS-CoV-2 Infection. JAMA 4月22日オンライン
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765183
(内容)
イタリアからの報告。PCRで感染が確認されたが、自宅待機となった202名に対して、検査5から6日後に電話で聞き取り調査を行った。その結果、約2/3で嗅覚または味覚の異常が認められた。その約半分弱は軽度であったが、残りの半分強は重度の嗅覚または味覚異常を認めた。3%では嗅覚・味覚異常が唯一の症状で、12%では初発症状であった。

Yan et al., Self‐reported olfactory loss associates with outpatient clinical course in Covid‐19. Allergy & Rhinology 4月24日オンライン版
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/alr.22592
(内容)
アメリカ・サンディエゴからの報告。嗅覚・味覚の記録がある128名につていの解析。入院が必要であったのは26(20.1%)。入院の必要性と相関のある因子を調べたところ、高年齢、糖尿病、呼吸不全症状に加えて、正常な嗅覚・味覚が統計的に有意となった。入院群では嗅覚・味覚異常が見られたのは約1/4弱であったが、非入院群では約2/3が嗅覚・味覚異常を訴えた。
(コメント)
共に後ろ向き研究であり、また嗅覚・味覚異常は、患者の主観で判断しているので、結果の解釈には注意が必要。しかし、発熱や咳に加えて、嗅覚・味覚異常が新型コロナウイルス感染症の症状の一つであることは間違いない。嗅覚・味覚異常が主な症状の場合、ウイルス侵入箇所が肺から遠いため、重症化(肺炎)しにくいのかもしれない。

チャーター機感染者の約30%は無症状

Nishiura et al., Estimation of the asymptomatic ratio of novel coronavirus infections (COVID-19). International Journal of Infectious Diseases 掲載予定
(内容)
武漢からチャーター機で日本に帰国した人々の解析から、PCR陽性者における無症状者の割合は、約30%であると推定された。
https://www.ijidonline.com/article/S1201-9712(20)30139-9/pdf
(コメント)
下記のクルーズ船の結果と考えて、感染しても30~50%は無症候と考えられる。

クルーズ船感染者の約半数は無症状

Russel et al., Estimating the infection and case fatality ratio for COVID-19 using age-adjusted data from the outbreak on the Diamond Princess cruise ship CMMID Repository 3月5日オンライン公開

ダイヤモンドプリンセス号の乗客乗員の感染、症状の有無、そして不幸にも亡くなった方の割合を報告した論文。表2で、感染者における症状の有無を、年代別に報告している。若年層だけでなく、中高年においても半分前後の感染者が無症候であった。
(コメント)
査読前の論文ではあるが、極めて重要な情報を提供している。年齢にかかわらず感染者の約半分が無症状だったという結果は、私にとっては衝撃的でした。無症候なのは子供や若年者がほとんどと思っていました。
https://cmmid.github.io/topics/covid19/severity/diamond_cruise_cfr_estimates.html

この論文は感染研の下記の解析に基づいている
https://www.niid.go.jp/niid/en/2019-ncov-e/9417-covid-dp-fe-02.html

消化器症状が主訴のことも

Pan et al., Clinical characteristics of COVID-19 patients with digestive symptoms in Hubei, China: a descriptive, cross-sectional, multicenter study. AJG 3月20日オンライン版
(内容)
武漢の3つの病院に入院した204名の解析。99人(48.5%)の種所は消化器症状であった。消化器症状としては食欲不振83名、下痢29名、嘔吐8名、腹痛4名であった。7名は消化器症状のみで、呼吸器症状はなかった。消化器症状を示す患者は重症化する傾向にあった。
https://journals.lww.com/ajg/Documents/COVID_Digestive_Symptoms_AJG_Preproof.pdf
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