山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

ウイルスの特性

喫煙はウイルス侵入を手助けか?

Smith el al., Cigarette smoke exposure and inflammatory signaling increase the expression of the SARS-CoV-2 receptor ACE2 in the respiratory tract. Developmental Cell オンライン版
https://www.cell.com/developmental-cell/fulltext/S1534-5807(20)30401-9
(内容)
新型コロナウイルス感染の重症度と相関する因子として、高齢、男性、喫煙が報告されている。本論文では、これらの危険因子と、ウイルスが細胞に侵入するときに利用するACE2遺伝子の発現量との相関を検討した。まずマウスやラットから肺組織におけるACE2遺伝子発現量を調べたが、年齢や性差による影響はなかった。しかし、たばこの煙5カ月にわたって暴露させると、ACE2の発現量増加が認められた。人間のサンプルでは、肺に加えて腎臓と小腸でACE2の発現が確認された。年齢や性差による影響はなかったが、喫煙者では肺におけるACE2の発現量が多かった。喫煙量とACE2発現量には正の相関があった。また1年以上、禁煙することにより、ACE2の発現は減少した。さらに新型コロナウイルスの感染や、インターフェロンの刺激によりACE2遺伝子の発現が増加した。
(コメント)
喫煙者で重症化が多い原因の一つは、ACE2遺伝子の発現上昇かもしれない。

遺伝子変異から見たウイルスのファミリーヒストリー

Forster et al., Phylogenetic network analysis of SARS-CoV-2 genomes. 米国科学アカデミー紀要
https://www.pnas.org/content/early/2020/04/07/2004999117
(内容)
新型コロナウイルスは細胞分裂のたびに少しづつ遺伝子に変異が起こる。遺伝子変異を調べることにより、世界中のウイルスのファミリーヒストリーを推測することが出来る。本論文では世界各地から報告された253名由来のウイルス遺伝子解析の結果を比較した。ほとんどのウイルスの遺伝子は少しずつ違いがあるが、A、B、Cの3型に大別すること出来た。
A型はコウモリのコロナウイルスに一番近いもので、A-TとA-Cのサブクラスに分類できる。A-Tは4名の広東省の4名、武漢滞在歴のある2人のアメリカ人、そして3人の日本人にみられた。A-Cは33名でみられ、約半分は武漢などの中国や東アジアであったが、残りの半分はアメリカ、カナダ、メキシコである。
B型は、A型と比べて2か所の配列の違いが特徴であり、93名でみられた。74名は武漢などの中国や東アジアでみられたが、残りはアメリカ、カナダ、メキシコ、ヨーロッパでもみられた。東アジアのウイルスの変異は少なかったが、アメリカやヨーロッパのウイルスでは多くの変異が見られた。
C型では、B型からの1か所の遺伝子変異が共通してみられる。ヨーロッパで多くみられ、中国からは報告されていない。しかし、シンガポールや香港では見つかっている。
(コメント)
ワクチンを作っても遺伝子変異で無効になる可能性がある。遺伝子の変異に応じて、治療法を考えるべきかもしれない。

Tangらは3月3日に発表した論文
https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwaa036/5775463
で、新型コロナウイルスをS型とL型に分けている。L型はS型が変異して生じた。L型の方がより感染力が強い。武漢ではL型が多かったが、その後の強力な封じ込めにより他の地域ではL型が減少し、S型が中心になったとしている。
この論文に対しては過大解釈であるという批判がある。
http://virological.org/t/response-to-on-the-origin-and-continuing-evolution-of-sars-cov-2/418
しかし、変異の種類から見ると、TangらのS型はForsterらのA型に、L型はBとC型に相当する。

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