山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

感染様式と対策

3月下旬における日本人の行動調査

Muto et al., Japanese citizens' behavioral changes and preparedness against COVID-19: An online survey during the early phase of the pandemic. Pros One 6月11日オンライン版
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0234292
(内容)
新型コロナウイルスに対する対策として日本人が自主的にとった行動を解析した調査結果。調査は326日から28日までオンラインで行われ、20歳から64歳までの11342人から回答が得られた。その結果、回答者の80%以上が、3蜜を避ける、大勢の集まりに行かない、頻繁の手洗いを行っており、70%以上が、咳エチケットやマスクの直用を行っていた。このような対策を取るきっかけとして一番多かったのは、2月上旬のダイヤモンドプリンセス号での集団感染(23%)と3月上旬の世界各国への感染拡大(22%)であり、次いで多かったのは2月下旬の首相による全国一斉休校要請(14%)であった。これら一連の出来事により、多くの日本人が感染対策を自主的に始めたことがわかる。一方で、約20%の回答者は、感染対策に対して消極的であり、30歳未満、男性、外交的、低い所得、と相関があった。
(コメント)
iPS
細胞研究でもお世話になっている武藤教授らの論文。3月下旬には多くの日本人が感染対策を自主的に行っていたことが、感染拡大の抑制に貢献したことを支持する結果。個人的には、329日の志村けんさんのご逝去に非常に大きな衝撃を受けました。

クラスター対策班からの報告

Furuse et al., Clusters of Coronavirus Disease in Communities, Japan, January–April 2020
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/9/20-2272_article
(内容)
押谷先生らクラスター対策班からの報告。国内で4月までに確認された61クラスターのうち、18例(30%)は医療施設、10例(16%)は介護施設等であり、医療・介護施設等で薬半数を占めた。他は、レストランやバーが10例(16%)、職場が8例(13%)、ライブコンサート、合唱団、カラオケなどの音楽関係が7例(11%)、ジムが5例(8%)、葬儀等が2例(3%)、機内が1例(2%)であった。
クラスターの原因となった1次感染者は22例で確認され、6例は20歳代、5例が30歳代であった。22例中9例(41%)では、クラスター発生時に1次感染者は無症状、もしくは発症前であった。1次感染者の発症日とクラスター発生日の関係を見ると、前日が最も多く、次いで当日、2日前の順であった。
(コメント)
国内におけるクラスターを解析した重要な論文。
1次感染者の多くは20歳代、30歳代
・年齢に関わらず、クラスター発生時に1次感染は無症候、もしくは発症前
2点は、今後の対策を考える上で貴重な情報である。

マスクの重要性(6月16日)

Zhang et al., Identifying airborne transmission as the dominant route for the spread of COVID-19. 米国科学アカデミー紀要 611日オンライン版
https://www.pnas.org/content/early/2020/06/10/2009637117
(内容)
新型コロナウイルス拡大の中心は、武漢からイタリア、そしてニューヨークと移行した。この3か所における対策と、感染者数の動向を比較検討した。その結果、Social distanceLockdownの効果は限定的であり、イタリアでは47日に、ニューヨークでは416日にFace maskの着用が義務付けられてから、感染者の減少が促進された。新型コロナウイルス感染症においては、飛沫や接触感染よりも、微小飛沫(エアロゾル)による感染が重要であり、マスク着用が感染拡大に効果的であると考えられた。
(コメント)
シカゴの小山先生に教えて頂きました。マスクを外さなければならない食事時の対策が重要と考えられます。

ニューヨークではマスクが推奨されてから感染者数の減少速度が加速した。

濃厚接触者の追跡におけるアプリの活用

Cohen et al., Digital Smartphone Tracking for COVID-19 - Public Health and Civil Liberties in Tension. JAMA 5月27日オンライン版
JAMAへのリンク
(内容)
新型コロナウイルスへの対策として、感染者との濃厚接触者の追跡が極めて重要である。保健担当者による電話や対面での調査が基本であるが、それを補う手段として、中国、韓国、台湾等では、スマートフォンのアプリが活用されている。これらの国で用いられているアプリは、GPS機能を利用しており感染者との接触歴に加えて、各個人の行動履歴も保険担当者に通知される。さらにこれらの国は、GPS機能を用いて隔離者の行動を監視し、隔離措置に違反した場合は罰金等を課している。一方、別の種類のアプリとして、GPSではなく、Bluetooth機能を活用し、感染者との接触歴のみを個人に伝えるタイプがある。Apple社とGoogle社が共同で開発しているアプリはこれに該当する。両社は基盤となるアプリを各国保健担当者に提供し、各国の実情に合わせたアプリが開発できるようにしている。こちらのタイプのアプリにおいては、利用者がアプリをダウンロードする、もしくは機能をオンにすることが必要であり、有効に活用されるためには60から70%の利用者がオンにする必要がある。シンガポールで同様の取り組みを行ったところ20%しかオンにしなかったと言われており、いかに利用者を増やすかが課題である。何らかの得点を与える必要があるかもしれない。また同アプリが他の目的には利用されないこと、また新型コロナウイルスが終息したのちは、データが消去されること、などが担保されることが必須である。
(コメント)
日本でも後者のタイプが6月から導入されると聞いています。経済を動かしていくために、多くの方に利用してもらうことが重要です。

鼻粘膜でのACE2発現量は子供で少ない

Bunyabanich et al., Nasal Gene Expression of Angiotensin-Converting Enzyme 2 in Children and Adults. JAMA 520日オンライン版
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766524

(内容)
喘息の研究のために採取された各年齢からの鼻粘膜生検サンプルを用いて、新型コロナウイルスが細胞に侵入するときに利用するACE2遺伝子の発現量を調べた。その結果、10歳未満の鼻粘膜では、10歳以上のサンプルよりACE2遺伝子の発現量が少なかった。
(コメント)
子供は新型コロナウイルスに感染しにくいかどうかに関しては議論がある。各国で子供の感染者数報告は少ないが、無症状や軽症が多く見逃されている可能性もある。今回の結果は、子供では鼻粘膜のACE2遺伝子発現量が少なく、ウイルス感染が起こりにくい可能性を示唆する。しかし、発現の差はそれほど大きく無く、さらなる研究が必要である。

フィットネススタジオでのクラスター解析(韓国)

Jang et al., Cluster of Coronavirus Disease Associated with Fitness Dance Classes, South Korea. Emerging Infectious Diseases オンライン版
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/8/20-0633_article
(内容)
韓国チョナンのフィットネススタジオにおける集団感染の報告。215日にチョナンで行われたインストラクター対象のラテンダンス講習会に参加した27名の中から8名が感染。テグから参加して無症候だったインストラクターが感染源の可能性がある。インストラクター達は無症候、もしくは軽症の間はラテンダンスの指導を続け、12か所のフィットネススタジオで、計112名の集団感染となった。このうち57名はインストラクターからクラス参加者への感染、38名はインストラクターまたはクラス参加者から家族への感染、そして17名は同僚や知人への感染であった。フィットネススタジオでの濃厚接触者で検査したのは217名で、その中で57名が陽性であったのでアタック率は25%を超えている。しかし同じインストラクターであってもピラテスやヨガのクラス参加者や、ラテンダンスであっても参加者が5名以下であった場合、クラス参加者への感染は確認されなかった。2次感染疑いで検査した830名中、34名が陽性であったのでアタック率は4.1%、3次感染疑いで検査した418名中、10名が陽性でアタック率は2.4%であった。
(
コメント)
韓国での徹底的な追跡調査がうかがえる。室内で大人数での激しい運動は感染リスクが高いことを改めて物語っている。

アメリカ透析施設医療従事者の追跡調査

Hains et al, Asymptomatic Seroconversion of Immunoglobulins to SARS-CoV-2 in a Pediatric Dialysis Unit. JAMA 5月14日オンラン版
JAMAのリンク
(内容)
腎臓透析施設で新型コロナウイルス感染が広がった例が報告されている。米国インディアナ州の小児透析施設では、3月25日に1人の患者が発熱等を示し、PCR検査で陽性であった。この患者は隔離室で透析が続けられた。同施設の他の部屋で透析を受けている13名の患者と25名の医療従事者(11名の看護師、4名の事務員、そして10名の医師)について、3週間にわたって追跡調査を行った。2名の医療従事者では発熱等が認められたが、PCR検査は陰性であった。このうちの一人ではPCRが3間連続で陰性であったが、3週間後には抗体が陽性となった。それ以外の23名の医療従事者では感染を疑う症状は出現しなかったが、3週後には10名が抗体陽性となった。最初の感染患者を直接に担当した医療従事者は、抗体は陰性のままであった。最初にPCR陽性となった患者は抗体も陽性となった。それ以外に2名の患者が、無症候であったにも関わらず、抗体が陽性となった。
(コメント)
感染者の治療を行う医療施設では、医療従事者が、大部分は無症状で、一部の有症状者もPCR陰性であったにも関わらず抗体が陽性となっている。日本でも同様の調査が必要である。

アメリカ・シアトル州におけるPCR陽性率の推移

Randhawa et al., Changes in SARS-CoV-2 Positivity Rate in Outpatients in Seattle and Washington State, March 1-April 16, 2020. JAMA 5月8日オンライン
(内容)
アメリカ・ワシントン州におけるPCR検査陽性率の推移。アメリカでの新型コロナウイルス報告第1例は、1月20日にワシントン州で発生した。 ワシントン大学ウイルス学部門は、全米における新型コロナウイルスPCR検査の先駆けの一つであり、3月1日から4月中旬までに73000件のPCR検査を行っている。この間の陽性率の推移を、州全体の外来診療からのサンプル、シアトル近傍の外来診療からのサンプル、そして救急施設からのサンプルごとに解析した。外来診療からのサンプルは州、シアトル共に類似の推移を示した。外来診療、救急施設共に3月28,9日頃に陽性率がピークを迎え、外来診療では17.6%、救急診療では14.3%であった。その後、陽性率は低下し、4月中旬ではそれぞれ3.8% と9.8%であった。3月23日に州政府が“Stay home, Stay healthy”令を発令したことが、陽性率の低下につながったと考えられる。
(コメント)
州立大学であるワシントン大学が、1か月半で73000件のPCR検査を行っていることに驚いた。論文の責任著者に問い合わせたところ、全自動装置を用いて行っているとのことであった。論文には、PCR反応の能力はもっとあるが、鼻咽頭スワブの採取器具が品薄になっているとある。

子供の感染性は低いか?

How do children spread the coronavirus? The science still isn’t clear. Schools are beginning to reopen — but scientists are still trying to understand what the deal is with kids and COVID-19. Nature 5月7日
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01354-0
(内容)
学校の再開に関する論点をまとめたNature誌のニュース。感染の感受性、他人への感染性、そして感染後の症状についてまとめている。
子供は感染しにくいか?
日本を含む世界各地のデータでは、20歳未満の感染者の割合は非常に少ない。しかしこれは、子供は軽症や無症状が多く見逃されている可能性がある。先日紹介した下記の論文では、大人と子供では感染率は変わらないと報告している。しかし別のScience誌の論文では、15歳未満の子供の感染率は20歳から64歳の大人と比べると1/3程度と報告している。
子供は感染させにくいか?
フランスアルプスでのクラスター解析では、9歳の子供が感染し症状が出た後に、3つの学校と1つのスキー教室に参加したが、誰ににも感染させなかったと報告されている。オーストラリアの未公表の研究では、家庭での新型コロナウイルス感染例において、子供が最初の感染者であったケースは8%のみ、一方でH5N1鳥インフルエンザの時は50%が子供が最初の感染者であったという。
一方、別の未査読の論文は、子供のウイルス量は大人と変わらないと報告している。しかし、オーストラリアの小学校や高校での解析解析では、子供や生徒からの感染はほとんど無かったことを報告している。
子供は感染しても軽症か?
多くの研究者が、子供は感染しても軽症、もしくは無症候であることで一致している。しかし、その理由について様々な考えがある。一つの仮説は、ウイルスが細胞に侵入するときに利用するACEタンパク質が、子供の細胞ではあまり作られないというものである。証明するためには子供の肺組織が必要で、実際にはなかなか手に入れることが出来ない。
別の仮説は、子供は他のコロナウイルスによる普通感冒に最近、感染したことがあるので、新型コロナウイルスに対してもある程度の免疫を持っている可能性を指摘する。しかし、新生児でも軽症や無症状が多いことは、この仮説では説明できない。
他の仮説では、子供においては、新型コロナウイルスに対する免疫反応が、ウイルスを攻撃するが、免疫反応の暴走を誘導するくらいは強くないと考えている。
一方で、子供においても重症化することはある。特に、川崎病に似た症状が、ニューヨークやロンドンから報告されている。もともと川崎病が多い日本、韓国、中国では、小児の新型コロナウイルス感染が見逃されている可能性が指摘されている。

小児でも発症率は同じか

Bi et al., Epidemiology and transmission of COVID-19 in 391 cases and 1286 of their close contacts in Shenzhen, China: a retrospective cohort study. Lancet Infectious Diseases 4月27日オンライン版
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30287-5/fulltext

(内容)
武漢での感染爆発を受け、深圳市では感染者の同定と隔離を徹底しておこなった。114日から212日に、深圳疾病対策予防センターは391名の感染者と1286名の濃厚接触者を同定した。感染者の平均年齢は45歳、男性が187名、女性が204名。91%は同定時、軽症または中等症。222日現在、3名が死亡し、225名が回復。回復日数の中間値は21日。症状発生から隔離までは平均4.6日。接触者においては、発症から隔離までの時間が、平均1.9日間短縮された。同居と旅行同行による接触者では、2次感染の発生率が高く、それぞれ6.27倍と7.06倍であった。家庭内での2次感染率は11.2%。子供でも7.4%であり、有意差は無かった。しかし、小児では重症化することは少なかった。再生産数(R)は0.4Serial interval1次感染から2次感染までの時間)は平均6.3日(標準偏差4.2日)であった。

実効再生産数(Rt)の推定方法

Cori et al., A New Framework and Software to Estimate Time-Varying Reproduction Numbers During Epidemics. Am J Epidemiol. 2013;178(9):1505–1512
(内容)
実効再生産数(Rt)という言葉をよく耳にします。統計や公衆衛生の専門家でないとなかなか計算ができにくいですが、この論文は、専門家でなくても計算ができるよう、エクセルのマクロを提供しています。
https://academic.oup.com/aje/article/178/9/1505/89262

実効再生産数(Rt)が経済活動再開の指標

Thomas V. Inglesby Public Health Measures and the Reproduction Number of SARS-CoV-2. JAMA 51日オンライン版
JAMAのリンク
(内容)
武漢での1月から3月までの有効再生産数(Rt)に関する論文を紹介し、アメリカの経済活動再開を決めるための指標として、CDCが全米および各州のRtを毎週発表することの重要性を主張している。活動を徐々に再開してもRt1を超えないかを確認してく必要があると主張している。科学的根拠に基づいた透明性の高い政策決定が求められる。

抗体検査に関する考査

The Promise and Peril of Antibody Testing for COVID-19. JAMA 4月17日 オンライン版
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2764954
Antibody surveys suggesting vast undercount of coronavirus infections may be unreliable. Science 4月21日 オンライン版
https://www.sciencemag.org/news/2020/04/antibody-surveys-suggesting-vast-undercount-coronavirus-infections-may-be-unreliable#
(内容)
抗体検査に関して様々な議論があります。JAMAScienceというアメリカを代表する医学雑誌、科学雑誌の論評を基に、考察したいと思います。

JAMA誌の論評は概ね、好意的。PCR検査は、今、ウイルスに感染しているかを調べるが、抗体検査はこれまでに感染したかを調べる。無症状で感染に気付かなかった人を見つけることが出来る。抗体検査を自治体として初めに採用した一つがコロラド州のサンマグエル州。8000人の住民を調べたが、結果が判明した4757人中、陽性は26名、陽性疑いが70名であった。個々で用いられた抗体検査はELISAと呼ばれるもので、抗体の量を測定することが出来る。陽性疑いは、抗体量が低い例で、感染して日が浅く、抗体が十分にできていない可能性がある。
https://www.sanmiguelcountyco.gov/590/Coronavirus
一方、Lateral flowと呼ばれる、陽性か陰性化だけを判定する多くのキットが、企業や大学で作られてる。FDAは、3月末に、FDAの承認無しで、これらのキットを提供しても良いと70以上の企業に通知した。これらの検査は、感染後、日の浅い人では陰性と判定される可能性が高く、現在進行形の感染を疑う人への検査としては不適切である。しかし、過大宣伝しているケースもあるため、今後、規制を強める予定である。また世界中のキットを集めて、客観的に評価しようとする活動もある。
https://www.finddx.org/covid-19/sarscov2-eval-immuno/
抗体ができている人の血液(血漿)は、重症患者に輸血することにより治療効果が期待されている。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763983
アメリカでは、回復した人に呼び掛けて血漿を集めようとしている。
https://ccpp19.org/index.html
また医療従事者や介護施設従事者に対する抗体検査も期待されている。抗体ができている人では、再感染や他の人に感染させるリスクが低いと考えられるからである。
新型コロナウイルスへの対策として行われている社会活動の制限をいかに緩和していくか。この重要な問題にも抗体検査は必須である。人口の半分くらいが抗体を持つようになると、感染の拡大は遅くなり、制限を緩めることが可能となる。
ただ、新型コロナウイルスは出現して半年に満たないので、わからないことだらけである。抗体ができたら本当に再感染しないのか、抗体がどれくらいの期間、持続するのか不明である。世界中で協力して、これらのデータを集める必要がある。

一方、Science誌の論評は辛辣です。ドイツや米国・カリフォルニア州の、抗体検査の結果、PCR検査で報告されている10倍や50倍くらいの人が抗体陽性であったとする発表に対し、その信頼性を疑っている。科学的には、抗体検査は擬陽性が生じるので、陽性の判定された人の多くが、実際には感染したことがない可能性を指摘している。さらに政治的に、これらの発表をしている人の中に、経済活動の早期再開を主張している人もいることから、恣意的な解釈がされているのではないかとも指摘している。
(コメント)
批判はありますが、PCR検査に比べて、大量の検査をより安全に行うことが出来る抗体検査は、今後の対策を決める上で極めて重要と私は考えています。検査の信頼性を科学的に検証することに、少しでも貢献したいと思います。

唾液を使ったPCR検査の有効性 (3論文)

PCR検査がなかなか広がらない理由の一つとして、鼻の奥からの検体採取が検査を受ける人にとって不快であり、一方、採取する医療従事者に感染の危険性が高いという事があります。これまで自分でも簡単に採取できる唾液で検査できるのではという、イタリアと香港からの論文を紹介しましたが、アメリカの名門医学部であるイェール大学からも報告がありましたので紹介します。

Wyllie et al., Saliva is more sensitive for SARS-CoV-2 detection in COVID-19 patients than nasopharyngeal swabs. medRxiv
file:///C:/Users/Shinya%20Yamanaka/OneDrive/On%20going/Reprint/Covid-19/Saliva%20vs%20nasopharygeal%20swabs.pdf
(内容)
査読前の論文。アメリカYale大学からの報告。新型コロナウイルスのPCR検査の検体として、通常行われている鼻咽頭(鼻の奥をゴシゴシして採取)と唾液を比較した。44名の感染者、合計121検体について解析した。陽性サンプル(唾液39検体、鼻咽頭43検体)で比較すると、唾液の方がウイルス量が約5倍多かった。29名では自己採取した唾液と、医療従事者が採取した鼻咽頭サンプルの同時比較が可能であった(38検体)が、やはり唾液検体の方がウイルス量が多かった。また唾液が陽性で鼻咽頭サンプルが陰性であったのは8例、唾液が陰性で鼻咽頭サンプルが陽性であったの3例であった。以上の結果から、唾液はPCR検査の検体として信頼できると考えられた。

(過去に紹介した論文)
Azzi et al., SALIVA IS A RELIABLE TOOL TO DETECT SARS-CoV-2. Journal of Infection 4月14日オンライン版
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0163445320302139#bib0028
Kai-Wang To et at., Consistent Detection of 2019 Novel Coronavirus in Saliva. Clin Infect Dis. 2月20日オンライン
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7108139/
(内容)
唾液からのPCR検査の有効性を報告したイタリア(Azzi et al.)と香港(Kai-Wang To et al.)からの論文。イタリアの論文では、重症もしくは重篤の25名の患者全員で、唾液サンプルでもPCR陽性であった。香港の論文では、患者の重症度は記載されていないが、患者自ら唾液を採取したとあるので、軽症か中等症であったと推察される。こちらは、12名の患者のうち、11名の唾液でPCR陽性であった。
(コメント)
唾液で検査ができれば、検体採取による2次感染のリスクを避けることが出来ます。日本でも同様の解析が必須です。

感染者は報告の数十倍?(スタンフォード大学の研究)

Bendavid et al., COVID-19 Antibody Seroprevalence in Santa Clara County, California. MedRxiv
(内容)
査読前の論文。
スタンフォード大学が位置するカリフォルニア州サンタクララ郡の3300名の住民に対して、アメリカで開発された抗体検査(ラテラルフロー法)を行ったところ、50名が陽性であり、過去に感染していたことが示唆された。群の人口動態で補正すると、48000から81000人の感染者がサンタクララ群にいると考えられる。これはPCR検査で報告されている感染者数の50-85倍に相当する。抗体検査の感度は約80%、特異度は99.5%であった。
(コメント)
査読前の論文であるが、内容をみると信頼できるように思える。日本でも同様の調査が求められる。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.14.20062463v1.full.pdf

抗体検査薬の評価

感染研による報告。論文ではなく、査読を受けないWeb上での公開。
(内容)
使用した抗体検出試薬は研究用試薬(A社製)とあるが、恐らくはクラボウが販売している中国製の試薬と考えられる。発症6日後までの血清において、IgG抗体陽性となった検体は1例のみであった。発症7~8日後の血清では、IgM抗体陽性率は10.0 %およびIgG抗体陽性率は25.0 %、発症9~12日後の血清では、IgM抗体陽性率は4.8 %およびIgG抗体陽性率は52.4 %、発症13日後以降の血清では、IgM抗体陽性率は59.4 %およびIgG抗体陽性率96.9 %であった。いずれに期間においてもIgM抗体陽性率はIgG抗体陽性率に比べて低く、IgM抗体陽性となった血清は全てIgG抗体陽性であった。
(コメント)
PCR検査とは異なり、今、感染しているかどうかの判断には使えない。しかし、2週間後には、PCRで陽性だった人のうち、97%がIgG抗体が陽性であり、過去の感染を検出するには有用と考えられる。今後、より多く、より長期のデータが必要。また国産の試薬が必要。抗体検査は、今後の鍵となると思われる。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/9520-covid19-16.html

抗体検査薬の開発

Amanat et al., A serological assay to detect SARS-CoV-2 seroconversion in humans. bioRxiv 4月1日公開
(内容)
査読前の論文。ウイルス表面のSタンパク質(抗原)を哺乳類細胞や昆虫細胞で産生し、精製した。この抗原は、新型コロナウイルスに感染していた人の血液と強く反応した。一方、新型コロナウイルスに感染性していない人の血液、他のコロナウイルスに感染したことのある人の血液とは反応しなかった。血漿、血清どちらでも使えた。加熱処理後でも反応性は維持されていた。
(コメント)
抗体検査は、感染の広がりのモニター、治療量の血漿提供者の同定、そして医療従事者の感染リスクの判定など、今後のウイルス対策において鍵を握ります。高性能の抗体検査を国産で確立しなければなりません。

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.17.20037713v2.full.pdf

感染力は発症直前が最強か

He et al., Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. Nature Med. 4月15日オンライン版
(内容)
広州第8人民病院からの報告。77組の感染ペア(最初の感染者と2次感染者)を解析したところ、最初の感染者の発症日と2次感染者の発症日の間隔は、平均5.8日であった。一方、感染してから発症するまでの潜伏期は、平均5.2日と報告されている。この2つの数値の差は、2次感染者の多くは、最初の感染者が発症する直前(平均0.7日前)に感染したと推定される。発症後7日までに、感染性は急激に低下すると考えられた。
一方、感染者のウイルス量を経時的に測定すると、発症時が最高で、その後は直線的に低下しており、発症時には強い感染力を示すことと一致する。
(コメント)
SARSは発症後7日目くらいが感染力のピークであり、発症者を隔離することにより2次感染を防ぐことが出来る。新型コロナウイルスは、発症前に感染力のピークがあるとすると、発症者の発見と隔離のみでは感染の封じ込めは出来ない。社会的距離の徹底が重要である。
https://www.nature.com/articles/s41591-020-0869-5

数年の長期戦になるかも(ハーバード大学の予測)

Kisller et al., Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period. Science 4月14日オンライン版
(内容)
昨日、各社が報道していた論文。ハーバード大学によるアメリカの予測。内容が濃くて読み込むのに時間がかかりました。少し詳しめに解説します。
・ベータコロナウイルス
新型コロナウイルスの正式名はSARS-CoV-2でベータコロナウイルスの一つです。人間に感染するベータコロナウイルスは他に、SARSの原因ウイルス(SARS-Cov-1)、MERSの原因ウイルス、そして普通感冒の原因ウイルス(HKU1とOC43)の4種類があります。SARSとMARSは、致死率も高く、感染者の同定と隔離により封じ込めることが出来ています。一方、HKU1とOC43は感染しても無症状であったり、軽い風邪の症状のみの場合がほとんどのため、感染者の封じ込めは不可能です。さらにHKU1とOC43に対する抗体は、1年くらいで消失します。また冬になるとウイルスの力が増す特徴があり、HKU1ととOC43による普通感冒は毎冬、流行を繰り返しています。季節性インフルエンザと同じ特徴です。
・新型コロナウイルスの感染パターンの予想
新型コロナウイルスも、感染者の多くは無症候か軽症のため、感染者の同定と隔離による封じ込めは困難と考えられます。今後、どのような感染様式を示すかは、抗体の寿命、季節性の有無、抗体の交差性(HKU1やOC43への抗体がどの程度、新型コロナウイルにも効果があるかで決まります。一番、需要な要素は、抗体の寿命です。もし抗体の寿命が1年程度で、対策を何も取らないと仮定すれば、毎年の大流行を繰り返すと予測されます。抗体の寿命が2年であれば、隔年で大流行します。一方、抗体の寿命が半永久であれば、今年のパンデミックので感染は終息することになりますが、人口の半分以上が感染し、医療は間違いなく崩壊します。
・活動制限はどれくらい続けるべきか(1回のみの対策の場合)
この予測の大前提として、感染拡大は、人口の半分以上が感染し、いわゆる集団免疫の状態になるまで続くと仮定しています。また新型コロナウイルスに対する抗体は半永久的に持続し、一方でHKU1やOC43への抗体では影響を受けないとしています。対策の最大の目的は医療崩壊を起さないことです。アメリカでは人口1万人当たり、重篤患者用のベッドが0.89あると考えられています。したがって、各時点における重篤患者数がこの数字以下にする必要があります。何も対策をしないと、5月くらいにはこの数字が20以上になってしまいます。強力な活動制限を行うと、医療崩壊を防ぐことが出来ます。しかし、活動制限を解除すると、数か月後にはまた大流行が起こり、医療が崩壊すると予測しています。活動制限を継続すると、流行も医療崩壊も抑えることが出来ます。しかし、長期の活動制限は社会や経済の崩壊をもたらします。また人口に占める感染者の割合が増えず集団免疫が成立しません。活動制限を中断すると、すぐに大流行が起こる状態が続くことになります。
・対策を繰り返す場合
医療崩壊を防ぎ、しかも徐々に感染者を増やして集団免疫を成立させるためには、活動制限を断続的に行う必要があります。
図Aは季節性がないと仮定した予測です。数か月の活動制限を、短い間隔で何度も繰り返す必要があると予想されます。人口における感染者数の増加が緩やかで、2022年でも50%、すなわち集団免疫が成立しませんので、それ以降も断続的な対策が必要です。
図Bは季節性がると仮定した場合です。対策の継続期間や、間隔を、少し緩めることが出来ますが、やはり2022年以降も継続が必要である。
図CとDは、医療が整備され、重篤患者用のベッドが2倍になったと仮定した予測である。Cは季節性なし、Dは季節性ありの予想です。対策をかなり緩めることができ、2022年には集団免疫が成立します。重篤化を減らす治療薬や有効なワクチンが完成すると、同様の効果が期待できる。
(コメント)
1年どころか、数年の戦いになるという、厳しい予測です。新型コロナウイルスへの抗体の寿命を半永久と仮定していますが、HKU1やOC43と同様に1年程度で抗体が消失するとすれば、状況はより厳しくなります。医療体制の整備、治療薬やワクチンの開発に全力を尽くすととともに、長期の活動制限を強いられる方に対する経済的支援が必須です。
日本では、これまでのところ、武漢、イタリア、ニューヨークのような爆発的な感染者増大が起こっていません。一方で行動制限は、最も緩い国の一つでもあります。なぜ緩い対策でここまで持ちこたえているのか、現在のところ不明です。日本特有の何かがあるはずです。その何かを明らかにし、予測に組み込むことが、日本での対策を長期視野から決定するために必須と考えられます。

https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/14/science.abb5793

A)~D) 縦軸 左:人口1万人当たりの感染者数(黒)右:人口1万人当たりの重篤患者数(赤)、横の黒実線は医療崩壊が起こる重篤患者数。横点線は活動制限の開始と中断の目安となる重篤患者数。青は活動制限が実施される期間を示す。

ICUと一般病棟におけるウイルス汚染状況ー院内感染対策の難しさ

Guo et al. Aerosol and Surface Distribution of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 in Hospital Wards, Wuhan, China, 2020. EID Journal オンライン版
(内容)
中国、北京の病院から報告。重症患者が入院しているICUと、中等症患者が入院する一般病棟で、サンプルを採取し、PCR検査を行った。予想通り、ICUの方が陽性率が高かった。患者から4メートル離れた場所で採取した空気サンプルでもPCRが陽性であった。またコンピューターのマウス、ごみ箱、患者ベッドのフレーム、ドアノブ、さらには医療従事者の袖口、グローブのふき取りサンプルもPCR陽性であった。患者がいない場所の床のふき取りでもPCR陽性であった。
(コメント)
あくまでもウイルスのRNAが検出されたということで、感染性のあるウイルスが存在しているかは不明。しかし、院内感染防止のためには、極めて慎重な対策が求められることが示唆される。
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/7/20-0885_article

 

この冬、インフルエンザはどうだった?

Sakamoto et al.,Seasonal Influenza Activity During the SARS-CoV-2 Outbreak in Japan. 米国医師会誌 4月10日オンライン版
(内容)
2019-20年冬の日本におけるインフルエンザ患者数を、過去4年間と比較した。過去4年においては、年末から患者が急増し、1月末から2月中旬にピークを迎えた。一方、2019-20年においては、年明け後も患者数の増加は無く、1月後半には減少に転じた。

(コメント)
暖冬だった影響もあるかもしれませんが、1月上旬から、新型コロナウイルスの影響でマスク着用や手洗いの意識向上したことも原因と考えられます。このような衛生意識の高さが、他の国に比べて新型コロナウイルス感染者のピークが遅れている一因かもしれません。新型コロナウイルスはこれからが本番のようです。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2764657?guestAccessKey=90d3c93b-e4bf-4fbf-b427-dda837f61c17&utm_source=silverchair&utm_medium=email&utm_campaign=article_alert-jama&utm_content=olf&utm_term=041020

スーパーマーケットに行く時の注意事項

Desai and Aronoff. Food Safety and COVID-19. 米国医師会誌 4月9日オンライン版
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2764560?guestAccessKey=47542fdc-ed20-46fb-b2e0-e48c4abf5f3e&utm_source=silverchair&utm_medium=email&utm_campaign=article_alert-jama&utm_content=olf&utm_term=040920
(内容)
食べ物を介して感染したという報告はない。しかし、食べ物や買い物の表面についてるウイルスが手を介して接触感染する可能性がある。食料品等の買い物では次のことに留意。
・他の客と1.8メートル以上の距離を開ける
・カートや買い物カゴの取っ手の部分を消毒する
・店を出た後は、すぐに手洗い、もしくはアルコール消毒
・使い捨てのバックはすぐに捨てる。繰り返し使えるものは、数日たってから使う。
・食品の袋はアルコール消毒する
・高齢者や持病がある場合は、人に頼むか宅配を利用。もしくは、高齢者用の専用時間帯を設けている店を利用する。

飛沫やエアロゾルでのウイルス検出とマスクの効果

Leung et al, Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks. Nature Medicine 4月3日オンライン版
(内容)
コロナウイルス(新型コロナウイルスではなく、通常の風邪の原因となるコロナウイルス)、インフルエンザウイルス、もしくはライノウイルス(風邪の原因で一番多いウイルス)に感染した患者さんに協力してもらい、マスクをしない群とマスクをする群の2つに分け、30分間、呼気を採取し直径5μM以上の飛沫と、それ未満のエアロゾルに分取。それぞれのウイルス量を測定した。その結果、マスクをしていない場合、各ウイルスに感染した患者の約1/3で飛沫やエアロゾルでウイルスが検出された。ライノウイルス感染者のエアロゾルでは2人に1人の割合でウイルスが検出された。マスクをした場合、コロナウイルス感染者においては、飛沫とエアロゾルでウイルスは検出されなかった。インフルエンザ感染者の飛沫のおいてもマスク着用群ではウイルスが検出されなかった。しかし、インフルエンザ感染者のエアロゾル、ライノウイルス感染者の飛沫やエアロゾルにおいては、マスクの効果は認められなかった。
(コメント)
実際の患者の協力で、マスクの効果を科学的に解析した貴重な研究。患者の飛沫やエアロゾル内のウイルスが検出され、飛沫感染やエアロゾル感染の可能性が指示された。一方で、患者の2/3では飛沫やエアロゾルでウイルスが検出されず、他人への感染性は患者により異なる可能性が示唆される。コロナウイルス感染者では、マスクにより飛沫やエアロゾルへのウイルス排出が抑制できることが示唆された。本研究は普通感冒の原因のコロナウイルスが対象であるが、新型コロナウイルスにおいても、マスクの同様の効果が期待できる可能性がある。

https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2#Tab2

母から新生児への垂直感染の可能性(2論文)

Zeng et al, Neonatal Early-Onset Infection With SARS-CoV-2 in 33 Neonates Born to Mothers With COVID-19 in Wuhan, China. JAMA Pediatrics 3月26日オンライン版
(内容)
武漢小児病院において、新型コロナウイルスに感染している母親から帝王切開にて誕生した33名の新生児のうち、3名においてウイルス感染が確認された。
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2763787

Dong et al., Possible Vertical Transmission of SARS-CoV-2 From an Infected Mother to Her Newborn. JAMA 3月26日オンライン版
(内容)
29歳の初産の女性。新型コロナウイルス肺炎となり帝王切開にて女児を出産。帝王切開は陰圧室で行われ、母親はN95マスクを着用。女児は母に抱かれることなく、直ちに隔離された。女児はアプガースコア満点で、ウイルス感染を疑わせる症状はなかった。しかし出産2時間後の新型コロナウイルスに対するIgG抗が140.32 AU/mL、IgM抗体が 45.83AU/mLと上昇していた(正常は10未満)。咽頭スワブのPCR検査は5回連続で陰性であった。IgM抗体は胎盤を通過しない。母親の膣分泌液のPCR検査は陰性であったこともあり、子宮内での感染が示唆される。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763853

(コメント)
3月7日のLancet論文では、9例の解析で垂直感染は観察されていませんでした。しかし、今回、33例に症例数が増えると、10%くらいのケースで垂直感染の可能性が認められました。最新情報を常に確認する重要性を物語っています。

感染力(基本再生産数)に関する総説

Liu et al., The reproductive number of COVID-19 is higher compared to SARS coronavirus. Journal of Travel Medicine, 2020, 1–4
(内容)
1人の感染者が何人の人に感染させるか(基本再生産数R0)は、感染力を知るうえで重要な指標である。WHOは当初、新型コロナウイルスのR0は1.4から2.5程度であると発表していた。本論文では、その後に報告されたR0に関んする論文等12法の報告を解析した。その結果、R0の平均は3.28であり、WHOの当初の報告より高かった。この数値はSARSの報告と同程度であるが、SARSよりもはるかに感染者数が拡大していること考えると、SARS以上に感染力は高いと考えるべきかもしれない。
(コメント)
新型コロナウイルスの感染力(R0)はまだ確定していませんし、国によっても異なる可能性があります。イベント自粛や外出禁止などの対策によってR0が低下する可能性もあります。しかし、対策と取らなければ、季節性インフルエンザより新型コロナウイルスの方がR0が高い可能性は高いと思われます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32052846/

トイレが感染源になる可能性(2論文)

Wang et al., Detection of SARS-CoV-2 in Different Types of Clinical Specimens 米国医師会誌3月11日オンライン版
205名の患者の様々なサンプルでPCR検査を実施。29%では便でも陽性であった。1%では血液でもウイルスが検出された。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762997

 Sean Wei Xiang Ong et al., Air, Surface Environmental, and Personal Protective Equipment Contamination by Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) From a Symptomatic Patient 米国医師会誌3月4日オンライン版
シンガポールの病院での隔離病室での検討。トイレのドアノブや便器の表面からPCRでウイルスが検出された。空気サンプルからは検出されなかったが、排気ダクト表面からは検出された。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムによる消毒後は検出されず
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762692?widget=personalizedcontent&previousarticle=0

微粒子(エアロゾル)に関する2論文

Asadi et al, Aerosol emission and superemission during human speech Increase with voice loudness. Sci Rep , 9: 2348, 2019
(内容)
微小粒子(エアロゾル)は咳やくしゃみだけでなく、会話でも放出される、さらに声が大きいほどエアロゾルは多くなる
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30787335/

Cowling et al., Aerosol transmission is an important mode of influenza A virus spread. Nat Commun. 4: 193, 2013 
(内容)
インフルエンザAの感染の半分くらいが微小粒子(エアロゾル)を介して起こっている可能性がある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3682679/

エアロゾル内や媒介物の表面における生存時間

Doremalen et al., Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1. New England Journal of Medicine 3月17日オンライン版
(内容)
新型コロナウイルスはSARSウイルスに一番近いウイルス。両者の生存時間を調べたが、ともに空気中に浮遊するエアロゾル(水分等の微小粒子)内では数時間、プラスティックやステンレスの表面では1日以上、生存した。新型コロナウイルスも、SARSと同じように微小粒子や媒介物による感染で広がる可能性が示唆される。
(コメント)
SARSでは微小粒子(エアロゾル)を介した感染や媒介物による接触感染が、院内感染やスーパースプレッダーに繋がっと考えられているので、新型コロナウイルスでも同様の注意が必要。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2004973?query=featured_home

妊娠後期の患者9名の解析

Chen et al., Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records. Lancet 395, 809-815, March 07, 2020

 

妊娠後期に感染し、発症した9名の妊婦の解析。9名全員が帝王切開で出産。9人の新生児は全員が健常。母子感染は確認されなかった。
(コメント)9名のみの少人数の解析ではあるが、ジカウイルスや風疹とは違い、母子感染による新生児への影響は確認されていない。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30360-3/fulltext

 

温州ショッピングモールにおけるクラスターの解析

Cai et al., Indirect Virus Transmission in Cluster of COVID-19 Cases, Wenzhou, China, 2020
Emerg Infect Dis, 26 (6) 2020 Mar 12[Online ahead of print] 
(論文の内容)
温州のショッピングモールで発生したクラスター感染の解析。1月21日に最初の感染者が同定され、合計35名の感染者が発生。きっかけは武漢から12月18日に戻った従業員Aと考えられるが、彼女が発熱したのは1月15日であり、潜伏期間中に同じオフィスの6名に感染したと考えられる。その後、他のフロアの店員や客にも感染が広がったが、最初の7名との直接接触は確認されておらず、女性トイレやエレベーターを介しての間接的な感染が疑われる。
(コメント)
日本での感染防止を考える上で貴重な情報。潜伏期間も1日から17日と患者によって大きく異なる点にも注意。間接的感染もあり得るので、ドアノブやエレベーターボタンの消毒なども重要。クラスターのきっかけとなった従業員は武漢から戻って28日後に発熱。この発熱は別の原因で、彼女は無症候病原体保有者であった可能性が高い。
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/6/20-0412_article

症状の無い感染者から、家族5名に感染

Bai et al., Presumed Asymptomatic Carrier Transmission of COVID-19 米国医師会誌2月21日オンライン版
(論文の内容)
1月10日に20歳の女性が武漢から安陽に行き、1月13日に5名の家族に会った。家族5名(42から56歳)は1月23日から26日にかけて発熱や呼吸器症状が出現し、入院。全員が新型コロナウイルス陽性であった。20歳の女性は無症状であったが隔離され、26日はPCR陰性であったが28日陽性となった。2月5日と8日には再び陰性となった。
(コメント)
無症状の若者から多くの家族に感染したことを報告した論文。日本でも、感染に気付いていない若者からの感染、特に高齢者への感染をいかに防ぐかが、重要な課題です。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762028

再生産数(R)の推定

Cori et al., A New Framework and Software to Estimate Time-Varying Reproduction Numbers During Epidemics. Am J Epidemiol. 2013;178(9):1505–1512
(内容)
再生産数(R)という言葉をよく耳にします。統計や公衆衛生の専門家でないとなかなか計算ができにくいですが、この論文は、専門家でなくても計算ができるよう、エクセルのマクロを提供しています。

https://academic.oup.com/aje/article/178/9/1505/89262

PAGE TOP