山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

1回接種の効果は?

1回接種では効果は無いのでしょうか?

ファイザー社製のワクチンは2回接種が前提で承認されています。しかし、1回接種のみでも発症や感染を70~80%以上抑制するという報告がイギリス、イスラエル、アメリカから相次いでいます。さらに1回接種後に感染したとしても、家庭内で家族に感染する割合が40から50%減少するという報告もイギリスから行われています。一方、発熱などの副反応は2回目接種の方が頻度が高いことが報告されています。一方で、ワクチン接種により出来る中和抗体(感染を防ぐ力のある抗体)の量は、1回接種のみでは個人差が大きいことも報告されています。ワクチンは中和抗体に加えて、Tリンパ球も活性化することが知られていますので、さらなる研究が必要です。

イギリスからの報告
昨年末からイギリス型変異ウイルスにより感染者と死者が爆発的に増加したイギリスでは、2回接種よりも、出来るだけ多くの国民にまずは1回接種する方針を取りました。
スコットランドからの報告
Interim findings from first-dose mass COVID-19 vaccination roll-out and COVID-19 hospital admissions in Scotland: a national prospective cohort study - The Lancet
によるとファイザー社製ワクチンの1回接種により、接種後28から34日目の入院者数が約90%減少したと報告されています。
さらにイギリス公衆衛生局からの報告
One dose of COVID-19 vaccine can cut household transmission by up to half - GOV.UK (www.gov.uk)
によると、ファイザー社製ワクチンの1回接種の21日目以降、仮に新型ウイルスに感染したとしても、家庭内での2次感染が40から50%減少したと報告されています。これは他の研究者による検証(査読)を受けていない報告ですが、1回接種により、感染や重症化が抑えられるだけでなく、2次感染も半減するとすると、非常に大きい効果が期待されます。

イスラエルからの報告
Lancet誌
世界でいち早くBNT162b2ワクチンの接種を進めたイスラエルの解析では、1回接種後15日目から28日目において、感染を75%、発症を85%減少させる効果があったと報告されています。

アメリカ疾病対策センター(CDC)の報告
CDC Real-World Study Confirms Protective Benefits of mRNA COVID-19 Vaccines | CDC Online Newsroom | CDC
昨年12月14日から今年3月13日までにファイザー社製、またはモデルナ社製のmRNAワクチンを接種した3950名について、毎週PCR検査を行っています。その結果、1回接種により感染を80%、2回接種により90%抑制したと報告しています。1回目も2回目もワクチン接種後に効果が出るまでは2週間程度必要としています。被検者全員に毎週PCR検査していますので、無症候感染も検出しています。1回接種のみでも、感染を80%抑制する高い効果が示されています。

世界的に有名なアメリカの病院であるメイヨークリニックも、同様の結果を査読後の論文として報告しています(3月10日)。
Impact of the COVID-19 Vaccine on Asymptomatic Infection Among Patients Undergoing Pre-Procedural COVID-19 Molecular Screening | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic (oup.com)
同病院では、全身麻酔が必要な外科手術など、特定の治療を受ける患者の全員に対して、症状の有無に関わらずPCR検査を行っています。4万件以上の検査の陽性率をmRNAワクチン(ファイザー社製およびモデルナ社製)接種者と非接種者で比較しました。その結果、1回目接種後10日目以降で79%、2回目接種当日以降では80%、PCR陽性の発生率が低下したとのことです。2回目接種の効果は、2回目接種後1週間程度以降に出現すると考えられますので、抑制効果は80%より高い可能性が考えられます。mRNAワクチンは、感染そのものを80%以上、抑制することを示唆しています。

New England Journal of Medicine誌における3月23日の報告
Antibody Responses after a Single Dose of SARS-CoV-2 mRNA Vaccine | NEJM
では、医療従事者を対象に、1回接種の3週間後における中和抗体活性(ウイルスの感染を防ぐ力)を測定しています(図1)。これによると、接種前に比べると多くの人で中和抗体活性は増大していますが、個人差が大きく、ほとんど増加しない人もいることがわかります。ワクチンの効果は中和抗体のみでは説明できませんが、1回接種のみで十分とは言い切れない結果でした。一方、以前に新型コロナウイルスに感染した人においては、感染後の中和抗体活性は個人差が大きいのに対して、ワクチン1回接種後は、ほぼ全員で高い中和抗体活性が得られています。

4月15日に発表された別の研究では、フランスの高齢者施設において同様の検討が行われています。
Spike Antibody Levels of Nursing Home Residents With or Without Prior COVID-19 3 Weeks After a Single BNT162b2 Vaccine Dose | Vaccination | JAMA | JAMA Network
この研究では、Sタンパク質に対する抗体を測定しています。新型コロナウイルス感染歴のない高齢者(平均年齢83.9歳)では、60名中、1回接種の3回後に抗体が陽性となったのは29名でした。一方、感染歴のある36名(平均年齢89.1歳)では、全員が非常に高い抗体を保有していました。感染歴のない高齢者において十分な抗体量を得るためには、2回接種が必要なことが示唆されました。

開発途中の臨床試験
Safety and Immunogenicity of Two RNA-Based Covid-19 Vaccine Candidates | NEJM
では、2種類のワクチン候補(BNT162b1BNT162b2)が試されています。
この小規模の臨床試験においては、両ワクチン候補とも3週間間隔で2回接種されており、2回目接種後7日後(1回目接種後28日後)において、感染して回復した人と同程度、もしくはそれ以上の中和抗体量が確認されています。副反応の比較的少ないBNT162b2が、大規模臨床試験へと進みました(図2)。1回接種のみで中和抗体がどれくらい出来るかの長期観察は行われていません。

BNT162b2は、その後の大規模臨床試験
Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine | NEJM
において、2回接種により新型コロナウイルスの発症を95%抑えるという高い効果が報告されています。
この大規模臨床試験においては、1回接種のみの効果は50%であったと報告されています。しかし、この解釈には1回目接種直後の感染例も含まれています。ワクチン接種後に免疫が獲得されるまでは10日程度かかると考えられます。データを見ると1回目接種後10日目以降は、感染者の発生は抑えられているように見えます(図3)。
イギリス公衆衛生局は、1回目接種後の14日後から2回目接種を行う21日後までや、2回目接種を21日目に行った場合でもその効果が出現しないと考えられる28日後までのデータを見ると、1回接種であっても90%程度の有効性が示されているとしています。
イギリス公衆衛生局の報告

現時点では、ファイザーのワクチンは1回接種でも効果のある可能性はありますが、臨床試験のデータが無く、日本では2回接種のみが厚労省から承認されています。

アメリカで緊急承認されたジョンソンエンドジョンソン社のワクチンは、臨床試験の論文
Interim Results of a Phase 1-2a Trial of Ad26.COV2.S Covid-19 Vaccine - PubMed (nih.gov)
をみると、1回接種と2回接種の両方が検討されています。1回接種後の29日目、57日目、71日目と中和抗体を測定していますが、1回接種のみでも、感染して回復した方に近い中和抗体ができています。この結果から同社は、1回接種でアメリカ食品医薬品局から緊急承認を得ています。
一方、57日目に2回目の接種を行うと、71日目において中和抗体はさらに上昇し、感染から回復した方を上回っています。2回接種の方が効果はより高いようです。

図1 ファイザー/ビオンテック社ワクチン1回接種後の中和抗体活性
図2 ファイザー社製のワクチンの臨床試験結果
図3 ファイザー社製のワクチン1回接種の効果
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