山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

ワクチンとは

免疫とワクチン

免疫とは
私たちが生きていくためには、外部から酸素や栄養を取り込む必要があります。その時、招かざる客であるウイルスや細菌も体内に侵入してしまいます。ウイルスや細菌が増殖すると感染症が発症し、最悪の場合死に至ります。ウイルスや細菌と戦うのが免疫です。免疫には自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は生まれつき備わっており、ウイルスや細菌にはあるが人間にはない成分を認識して攻撃します。自然免疫のみで退治できる場合もありますが、多くの場合は不十分で、ウイルスや細菌は増殖してしまいます。次に出動するのが獲得免疫です。侵入してきたウイルスや細菌だけを認識する免疫細胞が作られ、強力に攻撃します。ウイルスや細菌が初めて侵入したときは、獲得免疫が働くまで1,2週間程度かかります。しかしいったん獲得免疫が出来ると、次に同じウイルスや細菌が侵入したときは、速やかに攻撃を開始します。昔から同じ病気に2回かからない、という現象が知られていましたが、これは獲得免疫によるものです。

ワクチンとは
同じ病気に2回かからない、という現象を人工的に作り出そうという発想で誕生したのがワクチンです。ウイルスや細菌を何らかの方法で弱毒化、もしく無毒化してたものを投与(接種)することにより、獲得免疫を誘導します。その後、同じウイルスや細菌が侵入しても、獲得免疫がすぐに攻撃するために増殖を抑えることが出来ます。
ワクチンは感染や発症を予防するためのものであり、感染症になってから使用する治療薬とは異なります。

ワクチンの種類

New York Time 2020年5月20日より
ワクチンには様々な種類がある。今、人間に用いられているワクチンで一番多いのは弱毒化ワクチンである。これは、ウイルスを鶏卵などで長期培養することにより遺伝子変異を起こし、感染性を維持したまま弱毒化したものである。生ワクチンとも呼ばれる。このタイプのワクチンを接種すると人間の細胞に感染し、増殖するため、抗体(液性免疫)に加えてキラーT細胞による細胞性免疫も誘導する。また1回の接種で済むことが多い。しかし感染性があるため、発熱などの副作用について慎重に評価する必要があるし、ウイルスを大量培養する必要があるため、十分量のワクチンを準備するのに時間がかかる。麻疹、風疹、おたふく風邪など多くのワクチンがこのタイプである。ウイルスを化学処理して死活化したワクチンも用いられる。発症の恐れはないが、細胞性免疫は誘導できない。
新しい技術として、ウイルスの一部のタンパク質をコードするDNAやRNAを合成し、筋注する方法がある。大量合成が容易であるが、やはり細胞性免疫は誘導が難しい。また2回接種が必要なこともある。これらのDNAやRNAワクチンは、これまで人間で実用化された例はなかった。しかし、新型コロナウイルスに関してはファイザー社とモデルナ社がRNAワクチンの開発に成功し、多くの国で接種が始まっている。
DNAやRNAワクチンに近いものとして、遺伝子治療に用いられるベクタ―(細胞に遺伝子を送り込むためのもので、風邪の原因であるアデノウイルス等の一部を利用)を用い、新型コロナウイルスの遺伝子の一部を体に送り込みワクチンとして用いることに、アストラゼネガ社が成功している。
ウイルスの一部のタンパク質を合成してワクチンに用いることもある。抗原タンパク質を、他のウイルスのタンパク質と共にウイルス様の粒子にする方法と、抗原タンパク質のみ合成してワクチンにする方法がある。前者は子宮頸がんワクチンで、後者はB型肝炎ウイルスワクチンで用いられている。
図 ワクチンの種類
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