山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

オミクロン株が世界で急速に広がっています。私達は2年間の経験で新型コロナウイルスに関して多くのことを学びました。しかし設計図(遺伝子配列)に幾多の変異が生じたオミクロン株に関しては、感染力、ワクチン効果、重症化率、後遺症、そして流行の波の推移等を冷静に見極める必要があります。

新着情報

科学情報発信の難しさ

下記で解説しているように、科学情報の信頼度には大きな幅があります。このホームページでは、新型コロナウイルスに関する情報を、その信頼度を含めて発信するように心がけてきました。しかし、実際には非常に難しい作業でした。
イギリス政府は、ワクチンのデルタ変異ウイルスに対する効果に関する情報をその信頼度と共に発信し、毎週更新しています。
同国は日本と同じ3種類のワクチンを使用しています。使用量の多いファイザー社製ワクチンとアストラゼネカ社製ワクチンについて、発症を防止する効果はそれぞれ80-90%と65-75%であり、複数の研究が同様の結果を報告していることから情報の信頼度は高いとしています(図)。モデルナ社製ワクチンの発症防止効果は、90-99%としていますが、信頼度を高めるためにさらなる研究が必要としています。重症化(イギリスでは入院するのは重症化した場合)を防止する効果はファイザー社製とモデルナ社製は95%以上、アストラゼネカ社製は90%以上、感染そのものを防止する効果は、ファイザー社製は75-85%、アストラゼネカ社製は60-70%としていますが、いずれも信頼度をあげるためにはさらなる研究が必要としています。
情報の信頼度を色分けして示す同国の方法は、科学情報発信を行う上で大いに参考になります。
イギリス政府による情報発信

科学情報の信頼度

私は、科学的な真実は、「神のみぞ知る」、と考えています。
新型コロナウイルスだけでなく、科学一般について、真理(真実)に到達することはまずありません。
私たち科学者は真理(真実)に迫ろうと生涯をかけて努力していますが、いくら頑張っても近づくことが精一杯です。真理(真実)と思ったことが、後で間違いであったことに気づくことを繰り返しています。
その上で、私の個人的意見としては、医学や生物学における情報の信頼度は以下のようになります。

本情報発信では、各情報の根拠を明らかにし、下記の分類のどれにあたるかが判るよう心掛けています。

真理(真実)
>複数のグループが査読を経た論文として公表した結果
>1つの研究グループが査読を経た論文として公表した結果
>査読前の論文
>学術会議(学会や研究会)やメディアに対する発表
>出典が不明の情報


査読とは、他の研究者(専門家)が内容を検証することです。科学雑誌に論文を投稿すると、編集者が依頼した複数の研究者(数名)の査読を受けます。査読者は、論文の内容を検証し、そのまま公表すべきか、追加実験が必要か、それとも却下すべきかの意見を編集者に伝えます。編集者は、複数の査読者の意見を受けて最終決定を行います。しかし、査読を経て公表された論文であっても、後になって間違いであることが判明することもあります。複数の研究グループにより研究内容が再現され、複数の論文として査読後に発表された場合、信頼性は高くなります。しかし、その場合であっても、後になって間違いであることが判明することがあります。
最近は、査読前の論文であっても、インターネットで公表されることが増えています。査読前の論文は、参考にはするべきですが、他の研究者による公式の検証は受けていません。ただ、詳細なデータや実験方法は公表されますので、多くの研究者が独自に検証することが出来ます。
論文として公表する前に、学会やメディアに公表することも良くあります。メディアにより大きく報道される場合もあります。しかし学会やメディアにおける発表は、公表される内容が限られるため、検証が難しく、発表内容を鵜呑みにすることは危険です。
最近はSNS上等で、出典が不明の内容が拡散することも多くなっています。出典が不明の情報は、玉石混交と考えるべきです。
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